日本認知療法・認知行動療法学会理事長からのご挨拶

日本認知療法・認知行動療法学会 理事長 藤澤 大介

日本認知療法・認知行動療法学会(旧、日本認知療法学会)のホームページをご覧いただきありがとうございます。

日本認知療法・認知行動療法学会は、認知療法・認知行動療法をともに学び、実践し、社会に役立てていくことを目的とする学術的な集まりです。医師、心理職、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、薬剤師、学校教師をはじめとするさまざまな職種が参加し、医療、福祉、産業、教育、司法などの幅広い領域で活動を展開しています。

認知療法・認知行動療法は、「認知(ものごとの受け取り方や考え方)や行動が私たちの気分や身体に大きな影響を与える」という理解のもとに、認知や行動への働きかけを通して、気分や身体の改善をめざす精神療法(心理療法、カウンセリング)です。1960年代に米国のアーロン・T・ベック博士によって開発され、はじめに、うつ病の患者さんにおいて薬物療法とほぼ同等の治療効果や優れた再発予防効果が実証されました。その後、さまざまな精神疾患(不安症、外傷後ストレス症、強迫症、摂食症、統合失調症など)や身体的問題(慢性の痛み、過敏性腸症候群、がんなどの身体疾患に伴う身体・精神症状など)に対して効果が実証され、現在では、国際的に標準的な精神療法と考えられています。疾患に対する治療だけでなく、心身のウェルビーイングの向上にも有効という報告もあります。精神・心理・身体的問題に共通する理論を有することから、特定の精神療法というより、精神医学、一般医学、臨床心理学、看護学、作業療法学、ソーシャルワーク、教育学などにおける、対人支援の基本的な考え方(“共通言語”)に位置づけられることもあります。

2022年現在、わが国では、うつ病、パニック症、社交不安症、強迫症、外傷後ストレス症、神経性過食症に対して、一定の要件を満たせば、医師、または、医師と看護師の共同による認知療法・認知行動療法に対して診療報酬が支払われるようになっています。その対象は今後さらに広がっていくと期待されます。

このように、認知療法・認知行動療法の重要性は世の中でますます高まっています。当学会が、良質な認知療法・認知行動療法実践者の育成、専門家や市民への情報発信、学術的活動の推進などを通じて、認知療法・認知行動療法の普及と発展に貢献していければ幸いです。

私は、2022年11月に大野裕前理事長より職務を引き継ぎました。

「認知療法・認知行動療法を通じて社会に貢献する」をモットーに、これまで以上に多職種協働や関係団体との連携を推進し、認知療法・認知行動療法の普及と発展に寄与できるよう努めて参ります。どうぞお力添えをお願いいたします。


2022年4月吉日
日本認知療法・認知行動療法学会
理事長 藤澤 大介