日本における認知療法の拡がり

福居顯二1) 土田英人1) 西藤直哉1) 前林佳朗2) 井上和臣3)

要約:Beck, A.T.により創始された認知療法は,まずうつ病において用いられた。その後,不安障害,統合失調症,物質関連障害,嗜癖行動障害など多くの精神疾患にも応用され,徐々に,その有用性のエヴィデンスが蓄積されつつある。また,うつ病や不安障害治療によく用いられ,日本で創始された森田療法との共通点や相違点について簡単にふれた。

さらに,われわれは日本における認知療法の拡がりを見るために,日本の大学医学部・医科大学の精神医学講座において,「教育と臨床」という観点で認知療法がどの程度浸透しているかのアンケート調査を行った。研修医は認知療法を含めた精神療法のトレーニングをある程度受けていたが(31.4%),医学生では教育プログラムに組み込まれているのは18.6%であった。また,外来・入院を含む精神科臨床においては,認知療法の適用は54.3%であった。

認知療法の普及が十分でない要因として,専門家不足,教育時間の少なさ,診療の多忙さをはじめ,医師国家試験ガイドラインや診療報酬への未収載などが指摘された。今後,短縮した形でより簡便に実施できる認知療法も開発し,認知行動的技法を他の治療法と併用することなどが必要であると考えられた。

認知療法研究,1;26─32,2008

キーワード:認知療法,拡がりと浸透,日本,教育カリキュラム,臨床実践

1)京都府立医科大学院精神機能病態学
2)大津市民病院精神・緩和医療科
3)鳴門教育大学臨床心理士養成コース