統合失調症の治療に認知療法はどのような貢献をしたか

池淵恵美1)

要約:統合失調症は脳の構造や機能と関連した研究が進み,薬物療法が主軸となっている。それに加えて,心理社会的治療(家族介入,援助付き雇用,対人および日常生活のスキルトレーニング,薬物療法抵抗性の精神症状への認知行動療法を志向した精神療法など)が必須であるが,それぞれ標的が異なるため,包括的な援助を行う必要がある。本論は社会生活技能訓練と精神症状への認知行動療法を取り上げ,そのエビデンスについて紹介している。さらに統合失調症の精神療法の歴史の中で,認知行動療法の貢献として,患者との共同作業で取り組むことのできる概念やツールを提供したこと,薬物療法抵抗性の精神症状への介入技術の提供,自己認識と精神症状とを関連づける図式の導入により,精神障害や自己についての洞察を深める手がかりを提供したことを指摘した。さらに地域ケアが重視される中で,精密な認知行動療法がなかなか実践されていない現実に触れ,マスターモデルと普及モデルを工夫することでこの問題を止揚すべきことを提案した。

認知療法研究,1;33─44,2008

キーワード:統合失調症,認知行動療法,社会生活技能訓練(SST),心理社会的治療,精神療法

1)帝京大学医学部精神科学教室