うつ病の認知行動療法の現在と将来

伊藤絵美1)

要約:現在社会的に知られるうつ病は「メランコリー親和型うつ病」に偏っているきらいがあるが,実際に明らかにされつつあるのは,うつ病とは非常に複雑多様な疾患であること,世界的にうつ病の二極分化(軽症化,慢性化)の傾向が見られることの2点である。うつ病が複雑多様であれば,うつ病に対する認知行動療法も多様化する必要があり,「うつ病の認知療法」の創始者であるBeck, A.T.もそのことを認めている。うつ病の認知行動療法はBeckの認知療法を批判的に検討することを通じて発展している。現在の流れとしては,特に慢性うつ病の病理モデルの構築とそれへの介入をパッケージ化するアプローチと,個別の事例のアセスメントを中心に介入をカスタマイズするアプローチに二分される。将来の展望としては,うつ病の複雑多様性にさらに対応するべく,うつ病の認知行動療法のバラエティを増やすこと,うつ病の学際研究の成果を取り入れることなどが挙げられる。

認知療法研究,1;45─56,2008

キーワード:うつ病の複雑多様性,Beckの認知療法,パッケージ,カスタマイズ,アセスメント

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